充実度満点の週末。

konishi-san1_convert_20100404022203.jpg目黒川の桜見物の人波にもまれながら、大鳥神社の少し先のギャラリーコスモスで開催中の小西康夫さんの写真展を見に行く。これまで彼はエディトリアルの仕事が中心だったので、案内状が届いたとき、おっ、写真展だ、と思ったのだったが、さらに意外だったのはその内容。心霊写真のエクトプラズムのようなものが写っている。会場でそれら1点1点をじっくりと観察。白いやわらかなものがさまざまなフォルムをなして揺らいでいるが、その正体がわからない。ついに降参して小西さんに教えてもらった。その答えはここには書かないでおくが、話を伺ううちに浮かんできたのは、その「白いもの」にむかって黙々とシャッターを切っている小西さんの背中である。写真になっていま目の前にある白い像と、それを撮影する現場の状況には大きな隔たりがある。さながら顕微鏡をのぞく科学者の背中と、彼がレンズ越しに見ているミクロの世界のギャップのよう。科学者には到達すべき「目的地」があるが、写真家にはそれはない。何のためにその行為がなされるのかつかめないまま、のめり込んでいく。写真家の存在が魅力的なのはそこだ。みんなビョーキ持ちなのよ。そう、森山大道さんが言っていたのを思いだした。
ケンブリッジ
 夜は柴田元幸著『ケンブリッジ・サーカス』を開く。生れ育った場所であり、いまも生活の地である大田区六郷にはじまり、大学時代に訪ねたロンドン、リバプールと、若いころの自分と対話しながら場所の記憶をたどっていくという、週末に読むにはもってこいの作品。小西さんのところで、しばらく会ってない友だちの近況などを聞いたばかりだったので、読むうちに記憶がどんどん喚起され、ニューヨークの章に至ると街に出たくなり、本をつかんで近所のジョナサンへ。夜のダイナーに座っている男を描いたエドワード・ホッパーの絵の気分でカウンターに座り、ビールを飲みながら一気に読了。夜気のたしかなにおいを胸に吸い込みながら帰ってくる。パーフェクトな1日。(2010.4.3)