会った瞬間にいろんなことが腑に落ちた!

2010_0317_018_convert_20100318223742.jpg昨夜はナディッフアパートの上にあるマジックルーム???で岡田敦さんとのトークショーがありました。カフェ・ラウンジで深々したソファーに座って、いつものトークショーとはちがう雰囲気ではじまりましたが、ちがったのはそれだけではありません。相手の岡田さんがこれまで体験したことのないほど寡黙な方だったのです!
とても意外でした。木村伊兵衛賞を受賞した『I am』はリストカットしている人々がカメラの前で傷口や裸体をさらけ出した社会性の強い作品で、そこから想像したのは、社会にむかって何かを語ろうとする写真家の姿でした。ところが目の前の岡田さんはあまり物を言わない。もちろん質問には答えてくださるのですが、とてももどかしそうにゆっくりと話し、まるで別の時間を生きているような雰囲気なのです。その姿に接してさまざまな謎が一気に解けました。
 『I am』は自傷行為という社会問題が撮られているので、写真で何かを訴えかけようとしているように見えますが、そうではない。彼は理解を超えたものに撮りながら向き合い、自己の内部に化学変化を起こさせようとしたのです。
 最新刊の『Ataraxia』(青幻舎)はひとりの女性が自然の風景に融和していく至福の感覚を映像化した写真で、前作とまったく趣がちがいますが、自分を問おうとする意識の強い作家であれば、当然ながら内的世界の探求にも関心が向くでしょう。それが結実したのが『Ataraxia』であり、ふたつはいわば表裏一体の関係にあるのです。
 生身の人間に会うことの説得力をこれほど強く感じたのははじめてでした。終了後、近くで打ち上げをしましたが、そこでの岡田さんはトークのときよりは少し饒舌で、目をきらきらさせてとても楽しそうでした。
(2010.3.17)