『須賀敦子の旅路 ミラノ・ヴェネツィア・ローマ、そして東京』(文春文庫)が刊行、直販店では「スガさんへのレシピ」カード付き!

レシピカードと本_convert_20180327165653今年は須賀敦子さん没後20年。
その節目のとしに、この本を出せたことをよろこんでいます。須賀さんが亡くなって2年がすぎた2000年から2001年にかけて、須賀さんの足跡をたどり3冊の本に著して以来、須賀さんについて書いたり語ったりするのを控えていましたが、20年のあいだに静かに溜まっていったものがあったようです。
今回、その3冊に加筆し、「東京篇」を書下ろす作業をつうじて、そのことをひしひしと感じました。年月にはなにかを醸す力があるようです。自分ではとりたてて意識していなくても、心のなかで須賀さんと問答を繰り返し、考えがあたたまっていったのでしょう。書くことの醍醐味を味わえた体験でした。
須賀さんの作品は、私に力を与えてくれるところがあります。癒しやなぐさめよりももっと強い、希望を灯してくれるのです。(ですから、読んでくださった方々から「勇気づけられた」ということばをいただけたときは、なによりもうれしく思いました!)
書店活動をしたり、「どんぐりのたわごと」という小冊子をイタリアで発行して日本の友人に送ったりと、自分でできることを、野心的にならずに、慈しみをこめてやったのが20代から40代の須賀さんでした。そこに、これからの時代を生きるわたしたちへの、なによりも大きな励ましを感じるのです。
組織を大きくしたり、発展を目指したり、数で他者を圧倒するような目標を立ててる時代はもう終わりました。これからは、個人のつながりをベースにいかに濃く生きるかが試され、人生の味わいもそこにあらわれます。ですから、生きものとしてのこの身を枯らさないよう努めなくてはならないし、そのための知力が本には詰まっているのです。
ここ数年、個人で書店を開く人たちが全国に増えました。そういうお店に本書を直販していただきたいと思い、プレミアムとして「スガさんへのレシピ・カード」をつくりました。上の写真の中央にあるのがそのカードです。
須賀さんが入院しているときにロールキャベツを差し入れたところ、とても気に入ってくれて、今度レシピ、ちょうだい、とおっしゃいました。そのことばに、私は正直なところ驚いたのです。回復の可能性はわずかでしたし、もし退院できたとしてもロールキャベツなんてつくる気力なんてあるだろうかと。
でも、そのレシピでつくるシーンを想像することで彼女の生命はわき立ったのです。先のことはわからないけど、たったいまはその気持ちになっている、そう伝えてくれたのでした。結局、差し上げる機会がなく逝ってしまわれましたが、そのレシピを読者のみなさんとシェアして、須賀さんの生命力を身に浴びたいと思います。
レシピ・カードは直販店でのみ付きますが、以下がその書店です。
ポポタム(目白)、古書ほうろう(千駄木)、火星の庭(仙台)、栞日(松本)、ON READING(名古屋), 誠光社(京都)、蟲文庫(倉敷)、橙書店(熊本)、宮里小書店(那覇)
*ご賛同いただいた書店のみなさま、ありがとうございました。(2018.3.27)