西荻・音羽館の本が出ました!

音羽館古本屋への興味が広がったのは、古書店を会場にカタリココをはじめたことが大きいです。なじみの店をつくって店主と気軽にお話をするというような大人のふるまいが苦手な私は、それまではこそこそと出入りするだけでしたが、カタリココをきっかけにもう一歩踏み込んだつきあいが生まれました。

中央線沿線の高円寺から西荻窪のあいだには、行くのを楽しみにしている古書店がいくつかありますが、そのひとつが西荻の音羽館です。いけばシャイな私(!)でも思わず「穴蔵」の奥にいらっしゃる店主の広瀬さんに声をかけます。広瀬さんとは西荻ブックマークに呼んでいただいて以来のおつきあいで、ときには、うちの本から音羽館用の本をいくつかセレクトして持っていき、買っていただいたお金で近所でごはんを食べたり、「雨と休日」でCDを買ってかえったりします。とても心が満たされるひととき……。幼稚園の頃に西荻に住んでいたことがある私にとって一種の故郷なのもしれません。

このたび、広瀬洋一さんが『西荻窪の古本屋さん 音羽館の日々と仕事』(本の雑誌社)を出されました。広瀬さんが町田の高原書店で「修行」なさったことは聞いてましたが、古本屋稼業について、棚の作り方について、なによりも古本屋営業にいきついた広瀬さん自身の半生について教えてくれるとても良い本でした! 気軽な作りですが一本芯がとおっていてとても気持ちがよいです。

なかに中学時代の恩師の坂田博見先生という方がでてきます。この先生、音楽と映画と文学と写真が好きという、「博見」というお名前どおりの超ジャンル主義者なんですが、望遠とズームは使わないというのを読んで、たちまちこの先生に共感してしまいました! このふたつを使わないのは理屈ではなく、身体的に合わないんだと思います。私もそうなのでよくわかります。その感覚は先生の生き方にもあらわれ出ていて、退職後になんのゆかりもない京都に引っ越し、クラシック喫茶を開いたそうです。京都三条にある「風信子(ヒヤシンス)」。すぐにでも行ってみたくなりました!

本書には、なるほどとうなずくところがたくさんありましたが、ひとつ挙げるとすれば、この先生が合宿をして生徒を「音楽漬け」にしたことが、広瀬さんのその後に及ぼした影響です。先生は子どもたちに聴けとはいわずに、ただ音楽を流しつづけます。この物量の体験が、高原書店で山のような本と格闘するときに役立つんです。量を相手にしてびくともしない「体力」とは、脳をとおさずに直感力で物を判断できる力であり、この基礎体力があるゆえに音羽館の棚をあれほど充実したものにできるのでしょう。好きなものならべるだけでは空気が固まってしまうわけで、流動性こそが場の魅力であり力なのだと、改めて思いました。

今年の最後のカタリココは12月6日。森岡書店の企画により、「イマドキの本屋事情」について南陀楼綾茂さんと江口宏志さんにバトルをしていただきます! そこでのヒントになるような話題も本書からたくさんピックアップでき、当日が楽しみになってきました。(2013.9.22)