「ことばのポトラック vol.10」、熱気と緊張とスリルの6時間!

畠山さん_convert_20130610135534
またもや記録的な長さでした! 午後1時にはじまり、終了は6時半。昨年、写真家の畠山直哉さんのときと同じくらいの長大なイベントでした。本編は5時に終了したのですが、その後のエピローグ編にも多くの方が残ってくださり、さらに1時間半。テレビは答えではなく、問いかけるメディアなのだということを、それぞれが熱い思いとともに持ち帰ったような気がします。


そもそも、今回のイベントの「テレビに帰れ!」というタイトルは、出演者、金平茂紀さんの提案でした。わたし自身はテレビを見なくなっていますし、テレビについて考えることもないという状態。ですので幕を開けたときは、テレビドキュメントを2本上映するという以外、内容についてはなりゆき任せという状態だったのです。

トークがはじまると、金平さんが「テレビの公共性」ということを言われました。目が覚める思いがしました。テレビが公共のメディアだなんって、すっかり忘れていましたから! 映画を撮りつつテレビの仕事もつづけている是枝裕和さんが、テレビに関わることで閉鎖的な自己が変化したからだ、と語ったのにも目からウロコが落ちました。公共の場をつくり、個をそこに連れ出す。テレビのそもそもの役割はそれだったのです。

あなたは_convert_201306101320171966年制作の「あなたは……」を上映後、奇しくも会場でそれを疑似体験することになりました。番組のなかで行われていたのと同じ質問を、前置きなしに観客におこなってみたのです。インタビュアーが観客席に入ってマイクをむけ、それに答える観客の姿が前のスクリーンに写し出されるという趣向です。


当たった人にとってはまったくいい迷惑!いきなりの質問を浴びせられ、しかも呻吟する姿がスクリーンにさらされたのですから。会場に緊張が走りました。当たったらどうしようという気持ち、答えに窮する人を眺めている居心地の悪さ、場ぜんたいを包み込む耐えがたい空気感……。
 
これぞまさに「公共の場」が生まれる瞬間だったのではないか、と今朝になって気がつきました。わたしたちは居心地の悪さや緊張することへの耐性を失いつつあるのです。だからああいう場にとても緊張します。質問されるのも、それを見るのもいや。出来るなら逃げ出したいわけです。でもインタビューが終わったあと、会場の空気がずっと自由になったのを感じました。なんか一緒にひと仕事したあとのような爽快感。

緊張と衝突を避けるには個室にこもるのがいちばんだから、駅などの公共空間では携帯をにぎりしめている人がほとんどです。でも、そうすることでわたしたちは「公共の場」を作る能力をどんどんと失っていっている……。

かくいうわたしも、濃い人間関係は苦手、衝突は避けたい、社会関係は出来るだけ少なくして自由を確保したい、というタイプです。会社勤めの経験もないから、人間関係にはめっぽう弱いですし。だからこそ、昨日の話題のひとつひとつが身にしみました。公共性が損なわれている時代の病に自分もまた感染しているひとりだと実感したのです。

出演者三人_convert_20130610132705昨日、サラヴァ東京のあの場所で、「公共の場」を作るひとつの実験が行われたのだと思います。金平さん、是枝さん、インタビューに応えた6名の方、そしてイベントに参加くださった観客のみなさん、ありがとうございました。それぞれの持ち場でこの体験が芽を吹きますように。(2013.6.9)



写真上 インタビュワーが会場にいらしていた畠山直哉さんに彼と知らずにマイクをむけました。
写真中 「あなたは……」のワンシーン。生意気な小学生がおとなっぽ口調で答える姿に会場は爆笑。
写真下 イベントを終えて。右から是枝裕和さん、わたし、金平茂紀さん。
撮影:大越元さん。