親近感を抱いたフランシス・アリス展!

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ずっと気になっていた都現美のフランシス・アリス展、第一期は明日で終わりである。でも明日は「ことばのポトラック」があるのでだめ。行くなら今日しかない、と出かけていったが、よかった。想像した以上のよさだった。自分のニューヨーク時代を思い出して高揚した。ストリートから多くのことを学んだあの頃のことを。

フランシス・アリスはアントワープの生まれ、80年代からメキシコシティーに在住し、専門は建築だったが、90年代から現代美術に移行した、などと書いても何の説明にもならない。要するに既存の枠組みを抜け出し、街を舞台にして独自の思考を積み重ねた人。もちろん、考えるだけでなく実践もしたわけで、そのアクションの結果を映像作品で見ることができる。

都市のなかにも「自然」なるものを見いだす視点、意味に回収できない行為をしつこくおこなう点、実験的であること、行為の実践のためにさまざまなメディアを縦断するところなどに深い共感を覚えた。思考の過程を重視すれば、ジャンルを超えて全体性にむかわざるを得ないのだ。彼は机の上で考えるより(それもするだろうが)、街を歩くことを重視するが、その孤独な作業からすべてのアイデアが生まれていることにも、親近感を抱いた。

近年は数百人の参加者をともなった大プロジェクトが増えているようだが、個人の無名性に依拠した初期のプロジェクトのほうがはるかに魅力的に思えたのは、わたしが文学の側にいるからかもしれない。ひとりのプランに従って大勢の人間が同一の行為に及ぶところに、ファシズムのにおいがちょっとする。社会的な影響力は強く、教育的効果があるのもわかるが、やはり氷の塊が溶けきるまで街中を押してまわるような無意味で無謀な作業のほうに、詩的な輝きを感じてしまう。孤独というものを、それほどまでに信頼しているということだ。(2013.6.8)