「ポトラック vol.9」が無事終了しました!

ポトãƒãƒƒã‚¯_convert_20130317162356はじまる前は、いったい何がおこなわれるのか得体の知れないイベントだ、との声も聞こえてきた第9回「ことばのポトラック」。はじまってみると実にさまざまな言葉が響きあい、重なりあい、「ポトラック」らしいイベントになりました!

トップバッターの小林エリカさんは、放射能の元となったラジウムを発見したマリー・キューリー夫人の足跡をパリにたどったエッセイを朗読、ご自身で描いた絵を映像にして上映しました。絵とことばをつかって自分なりにアプローチしていく彼女の方法がよく伝わってきました。ビートニクスの詩人チャールズ・ブコースキーのことを書いた文章を朗読した江口研一さんが、サンフランシスコの路上で定期的におこなわれているポエトリーリーディングの映像も持ちよってくださったのも、抜群のアイデアでしたね。朗読の内容とマッチしてましたし、開場と同時にこれを上映したので、場の雰囲気がいやがおうにも盛り上がりました!

つづく大野更紗さんのポトラックもユニークでした!ご自身の出身県である福島の郡山のおばあさんたちから聞き取った声をアイフォンにいれ、それをそのままマイクに近づけて流してくれたのです。グルーヴ感のある音楽のような声の力に感動。こういう言葉の持ち寄り方もあるのか、と目の覚める思いがしました。藤谷治さんのパフォーマンスもおもしろかったですよ! チェロを弾くおじさんとその甥の物語を朗読、あいだにチェロの演奏がはいります。演奏もまた小説の一部となり、朗読劇のようなしみじみとした味わいがありました。

このあと10分の休憩。初回の出演者から届いたメッセージをわたしが読み上げたのですが、がやがやしてだれも耳を貸してくれません。見かねた佐々木中さんが「じゃ、男性のはぼくが読もう」と登場、だんだんとざわめきが静まり、最後はシーンとなりました! 大感謝。

後半は桜井鈴茂さんでスタート。ぐるぐるまわる想念を詩につづり、ターンテーブルでレコードをかけながら朗読、ことばの逡巡をレコードの動きに重ね、でもそこから脱しようとする意志も見せてくれた暗喩にみちたパフォーマンスでした!つぎは佐々木中さん。パウル・ツェランとブレヒトの引用文で構成したテキストを朗読、司会役だったわたしは内容を理解できるアタマの状態ではなかったのですが、ラッパーのような声の律動と動きにノッてしまいました。つづいて、読んでも意味が通じにくいかもとおっしゃりながら、新刊『夜を吸って夜よりも昏い』も朗読、会場を情熱で満たしてくれました。

「ことばのポトラック」では司会者とて司会の立場だけに甘んじていることはできません。今回の企画者の仲俣暁生さんと私の朗読がこれにつづきました。仲俣さんは20代に離島に教員として赴任していた父の記憶にまつわる文章を朗読、私はタイトルの「春に〜」にちなんで書いた短いエッセイ「ねこやなぎとねずみ」を読み、そのあと、ネイサン・イングランダーの短編集『アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること』のなかの「読者」の一部を朗読しました。

イベントのおもしろさは、だんだんと場が変化し、互いの放出した熱が響きあい、高まっていくさまが、目に見えるようにわかることですが、昨日はまさにそんな感じでした。無償でご出演くださった出演者に、この場を借りて深く感謝するとともに、足を運んでくださった参加者の方々にもお礼を申し上げます。

先にあげたイングランダーの短編は、長編小説を書いているあいだに存在が忘れられ、朗読会をしても空っぽという老作家と、そこにただひとりやってきた、昔からの愛読者である老人のバトルの物語です。老人は朗読しろ、と迫りながら、作家にこう問いかけます。

「どうして芸術家は微かな希望を糧に生きていく夢想家なんだ? どうして読者は同じじゃないんだ? どうして私のやっていることのほうが弱いんだ? 私は来た」

そう、この日サラヴァ東京に集まった方々は、この老人と同じです。「来た」ことにより、希望を糧に生きていく夢想家の一員になったのです。理念として、情念として、音声としてのことばの力を、場のなかで感じとるという体験が、大きな歓びにつながったのです。人は呼吸する生き物なのですね。集合写真_convert_20130317151414

ところで、来年3月の「ことばのポトラック」の企画をだれにお願いしようと、イベントにあいだずっと考えていたのですが、最後にふと思いついて「佐々木中さん、お願いします!」と言ってしまいました!1年先のことですし、まだなにもわかりませんが、このような夢想のなかから、新しい何かが芽生えてくるのでしょう。進展があったらご報告いたします。

*集合写真:後列右から藤谷治さん、仲俣暁生さん、桜井鈴茂さん、佐々木中さん、前列右から小林エリカさん、江口研一さん、大野更紗さん、そして大竹昭子。撮影・大越元
*『アンネ・フランクについて語るときに僕たちのかたること』は小竹由美子さん訳でまもなく新潮クレストブックで出ます。
*来年3月の前につぎの6月9日、TBS報道局の金平茂紀さんをお迎えして「ことばのポトラック vol.10」をおこないます。報道のことばと個人の声がテーマになるでしょう。詳しくはこのウェヴで告知いたします。(2013.3.17)