10月のカタリココのゲストは写真家の畠山直哉さん、二段構えの豪華な企画です

畠山畠山直哉さんは、「それぞれの人生を通じて身に付けた文化資本」や、「コミュニケーションを可能にしているような、共同体の精神的土台」などがゼロになった地点に立ち返ろうとするのが自分の写真だ、と著書『話す写真』のなかで述べています。すべてをチャラにして起源から考え直してみる。たしかに写真を撮ることにはそうした興奮、すべてのことを自分のやり方ではじめられる歓びがあるんですね。
10月1日から東京都写真美術館で畠山さんの写真展「ナチュラル・ストーリーズ」がオープンします。左の牛の写真は彼の20代の作品ですが、一目みて惹きつけられました。まぎれもない「写真」を感じます。写っているのは牛ですが、同時に、これは写真である、と思わせるものがあります。トラックを撮った写真もありますが、それも同じです。20代の彼の写真との自問自答が聞こえてきそうです。
オープニング翌日の2日に、畠山さんと私でトークをいたします。彼とは語りたいことがたくさんありますから、とても1時間半ではおさまらずにさわり程度で終わるでしょう。そこで翌々日の1月4日に神保町の古書店ボヘミアンズ・ギルドでそのつづきをたっぷりとお話します。畠山直哉の世界を二段構えで究めていく豪華な企画!
畠山さんは陸前高田のご出身で、大学で東京に出てきたとき、都市と自分のつながりが見いだせずに困惑したそうです。彼の代表作「ライムワークス」は故郷にある石灰岩の採掘現場を撮ったものですが、石灰が都市の建造物を作り上げるのに欠かせないコンクリートの元だと気づいたとき、都市と自分がつながったと言います。以前にその話をうかがって非常な興味を覚えました。
私は祖父母の代から東京という東京っ子で、自然からかけはなれた環境で育ってきたとずっと思っていましたが、あるときから、それは本当だろうか、「都市」と「自然」とは対の概念なのか、と考えるようになりました。「自然」は人間の考えだしたことばですが、その本質は概念の枠を超えた、もっと大きなものであるような気がしてきたのです。畠山さんは今回の震災により肉親を亡くされ、慣れ親しんできた陸前高田の風景を失いました。その彼が前掲書のなかで、写真の機械的な性質がどこなく不気味な、非人間的なものに思えることがある、と書いていたのがずっと心にひっかかってます。その「非人間性」と「自然」とはどのようにかかわっているのでしょうか。
写真家としてものすごく大きなテーマに直面している畠山さんと、いまこのときに語り合えるのは、なんという幸運でしょう。彼には、これまで考えてきたさまざまなことを丸ごとぶつけても大丈夫なような、強度としなやかさが感じられるので、いまからトークが楽しみでなりません。東京都写真美術館のトークの詳細については美術館のwebをご覧ください。カタリココの予約はすでに開始しています。ボヘミアンズ・ギルドに直接お申し込みください。(2011.9.17)

■東京都写真美術館トークショー
10月2日(日)15時~16時半


■カタリココ
日時:10月4日(火)18時半開場 19時開演
会場:神田神保町ボヘミアンズ・ギルド
入場料:1500円
予約:tel 03-3294-3300
   e-mail natsume@natsume-books.com