青山ブックセンター本店でブックフェア「エッセイと小説のあいだ」を開催中です!

わたしの独断で『図鑑少年』の仲間と思うものを12冊セレクトし、コメントとともに展示しています。作品に共通しているのは主人公が外界に魅了されていること、そのまなざしによって読者が物語の外に連れ出されること。
最初はこの告知に売り場の写真を載せようと思ったんですけど、そうするとどんな本が並んでいるかが一目瞭然となり、ミステリーの結末を明かすのと同じでおもしろみが半減。コメントの一部をご紹介することにしました。答えが気になる方、ぜひABC本店にお急ぎください!

1.かつて神戸にあったハキダメホテル。そこに集うへんてこな人々。神戸に行くときに必ずもってでる1冊。
2.「発表するために書いてたんじゃなくて、わたしたち自身を知るために、というかどこまで行けるかを知るために書いていたの」。こういう青臭くてステキな言葉が満載。
3. 世界が一方的に「私」のほうに近寄ってくる。しかも「私」はそれを拒まず、感覚する器になってことの次第をとことん慈しむ。そのまなざしのむこうに広がる世界の麗しさ!
4.最上階に住む出もどりのおばさんの部屋に行ってみたい。そこでおばさんの純白の絨毯にくるまって眠りたい。朝起きたら、窓の外には霞のたなびくフェズの町並みが見えるだろう。
5.彼女の書くものはリアルで同時にフィクショナルな気配をまとっている。ふたつは少しも矛盾しない。文化と言語の境界線上に立つ彼女の視線がそれをつないでいるから。
6.「こんちわ」と縁側から入っていき、すすめられるまま思わず長居し、夕食をごちそうになり、最後には天体望遠鏡で宇宙を眺めて帰ってきたかのような小説。近くのものから遠くまでがぜんぶ入っている。
7.作品を読むだけで充分という作家と、書き手本人に興味をもってしまう作家とがいるが、彼女は明らかに後者。その境界はどこにあるのだろう。
8.好きなように書いて、好きなように生きた人。本の山に囲まれ身動きのとれなくなった部屋であの世に旅立ったというのもすごい。だれにもまねできない。
9.読むうちに人間って妙な生きものだなあという感じがじわじわと染み渡ってきて、すごくほっとし、同時に楽しくなってくる。精神分析と小説は相性がいい?
10.石造りの街をさまよい歩き、大きな板の付いた武骨な鍵でドアを開け、固いパンをかじってベッドに横たわると、出会う人も飛んでくる鳥さえも夢の語り手になる、そんな島がホントにあるらしい。
11.怪しい人物がつぎつぎと登場し、想像と空想と幻想と幻覚の境界を消していく。怪しさとは妖しさなのだ。
12. 東京って息苦しくていやなことばっかり、と文句たらたらの人がいるかと思えば、おなじ東京でこんなにのびのびとサバイバルしている人がいる!

ところで、ここに挙げた本の著者であるK氏が、たまたま書店に行ってこのフェアを見た、とメールを下さいました。エッセイと小説との異同や関係性は文学上真剣に論議されるべき事柄なのに、いまだきちんと語り尽くされてない、小説とエッセイとがグラデーションとなっている汽水域にこそ成り立ち得る豊穣さがあるのに、という彼の言葉に大いにうなづき、励まされました。海水と淡水の流れ込む「汽水域」にはさまざまな生きものが生息します。そうした名付けようのない「変種」をこれからも応援していきたいと思います。(2010.12.27)