写真家ドアノーとパリ郊外をめぐる映像&トーク

Doisneau_01.jpgパリの人と街をとりつづけたロベール・ドアノーは、生前に1冊だけ写真についての本を書いてます。その『不完全なレンズで』が、堀江敏幸さんの見事な訳により、この秋に月曜社から出版されました。さっそく拝読して11月5日の書評空間に書いたのですが、そのとき10年以上前に観たある映像作品のことを思い出しました。作詞家で映像作家でもあるピエール・バルーがドアノーを撮った「時と時刻」という作品で、文末でそのことにちょっと触れてみたのです。
そうしたら作品を観たいという声がまわりで上がり、それなら場を設けようとトントン拍子で話が進み、年明け早々の1月10日に映写会&トークショー「ドアノーの写真人生」を開催することになりました。
トークにご出演いただくのは、その時期に来日中のピエール・バルー氏と、作家の堀江敏幸さん。画期的な顔合わせです。ドアノーの晩年にもっとも親しくしていたバルーさんと、『不完全なレンズで』の訳業をとおしてドアノーの一筋ナワではいかない人物像を実感した堀江さんとのあいだで、どんな話が繰り広げられるか楽しみです!
トークのテーマは「パリ郊外」。日本語で「郊外」と言うと中心部から遠く離れた場所をイメージしがちですが、パリ市街を取り囲んでいる城壁の外側のエリアのことを言い、1900年代のはじめからそこに移民の町が形成されていきました。ドアノーはもちろんのこと、バルーも郊外出身者で彼の書く詩にはそのにおいが漂っています。そして堀江敏幸さんはパリ在住中に中心街より郊外に親しみを抱き、そこを足しげく散策する中からデビュー作『郊外へ』が生れました。ドアノーはその冒頭の章と最終章に登場します。つまり、3人をつないでいるキーワードが「郊外」なのです。
また、バルーが「時と時刻」を撮影した理由というのもおもしろいんです。俳優の緒形拳さんがドアノーの大ファンでポートレイトを撮って欲しいと希望し、バルー氏が仲立ちしてドアノーに伝えたところ、彼は知らない外国人を撮るのはいやだ、と一旦は断ったそうなのです。それをバルーが、まあ、そう言わずに会うだけ会ったら、ととりなして引き合わせたところ、とてもうまがあいステキなフォトセッションになりました。その様子を撮影し、ふたりの魂の交流をカットバックでつないだのが「時と時刻」で、バルーならではすばらしい映像詩です。
撮影が行われたのは1993年1月で、翌年春にドアノーは亡くなりました。パリ郊外に生れ、ローカリティーにこだわった写真家が最晩年に撮ったのが「知らない外国人」だったというのも、なにか写真の不思議さを暗示しているような気がしませんか!
会場となるのは12月に渋谷にオープンしたばかりのライブスペース「サラヴァ東京」。ジャンルを超えた出会いをテーマに掲げる「サラヴァ」にぴったりの企画です。五十嵐哲夫さんのデザインによるポストカードサイズのステキなフライヤーは、サラヴァ東京、カタリココ会場の古書店、ナディッフ、青山ブックセンター本店ほかで配布しています。詳細は「その他のイベント」をご覧下さい。(2010.12.12)
*ナディッフ・モダン(Bunkamura内)で12月20日~1月10日までドアノー、ピエール・バルー、堀江敏幸、緒形拳などのブックフェアを開催します。