永井荷風、女に憎まれない人。

top_convert_20100908072448.jpgいま発売中の『東京人』10月号はこの雑誌にしては珍しい「悪女」特集。阿部定、オノ・ヨーコ、岡本かの子、中森明菜、樋口一葉……とさまざまに男心を惑わしてきた女たちが登場する。わたしは関根歌について書いた。永井荷風の愛人でもっとも関係の長かった人。彼女に「悪女」というほどの悪はない。一日中たすきを外すことのない家事をよくする働き者だったが、そういう歌が最後には「烈女」となったところが、逆に荷風という人の内実を想像させておもしろい。
荷風の女性遍歴は有名で『断腸亭日乗』にもつぎからつぎへと女性が登場する。いずれも玄人の女性で、不倫はしないし、別れ方もすっぱりしていてあとくされがない。そういう意味で筋が通っている。
歌は別れてのちに荷風のよき友人になったし、一時期、婚姻関係にあった八重次も晩年まで荷風と行き来をつづけた。わがまま勝手だけど、かわいいところがあって、別れても憎からず思う人だったのではないか。
荷風は「女性蔑視」の作家としてこれまで女性の書き手から手厳しくされていた感じがあったが、わたしは荷風の女好きは気にならないし、むしろ好奇心をさそう。(2010.9.12)