汚くて、危なかった30年前のニューヨーク。

11月に東京と大阪で行う写真展の準備をはじめた。はじめて一眼レフを買って写真を撮ったニューヨーク時代のモノクロを展示する。あの頃のイーストヴィレッジは汚くて、危なくて、放火が多くて、緊張を強いられる環境だったが、ひとたびカメラを手にすると、撮りたいものだらけで興奮した。撮りはじめたのは冬だったが、いくら街を歩いても寒く感じなかった。ああいう高揚感はあとにも先にも味わったことがない。写真との出会いは、ニューヨークでなければありえなかったかもしれない。
 Google Earthができたとき、当時住んでいた東9丁目のアパートを検索してみたところ、とてもきれいなっているのにびっくりした。建物そのものは同じだが、1階のストアフロントにファンシーな店舗が入っていて、青山か代官山かという感じだった。あの頃、あたり一帯はウクライナ人のコミュニティーで、アパートの大家もそのひとりだった。ボルシチやロールキャベツを食べさせる「キエフ」という名前の安食堂があって、ウクライナ人以外は何をしているかよくわからないボヘミアンが多かった。展示する写真には、そんなころのゴミとガラクタと廃虚だらけの、無愛想だがいかにもニューヨークらしい顔が写っている。秋になったら暗室作業をする。久々に入る暗い空間がどんな想像を引き出してくれるか楽しみだ。 (2010.8.4)
*写真展の詳細は「その他のイベント」欄にアップしました。