日本の風土を感覚させる緻密なグレートーン

銀座ニコンサロンで開催中の上本ひとしの「周防国景」。生れ故郷であり、現在も暮らしている山口県周防を撮ったモノクロ写真群の張りつめたエネルギーに圧倒された。現場を見たらなんということのない風景だろうが、湿気を含んだグレートーンの独特な世界が立ち現われている。暗室技術がものすごい。だが、技術だけが前に出た冷たさがない。風景に透視したものが作品化されていて、視線の成熟とはこういうことかと感じ入った。1953年生まれで、75年から写真をとりだし、メーカーのフォトコンテストで腕を磨いてきた。2005年に出した初の写真集「峠越え」で写真関係者を驚かせ、翌年さがみはら新人賞を受賞、その頃から急カーブでテンションをあげてきた印象がある。「靴屋をやりながら写真を撮っている」と年譜にあるが、彼の仕事ぶりをみていると「アマチュア」とか「プロ」とかの区分けが意味をなさないのを痛感。地方にいてこのような力ある写真を淡々と作っている人がいるのだから、日本の写真のすそ野は広い!! 会場構成もすばらしく、息を詰めて1点1点を凝視した。(2010.6.28)