今週は一気にボラーニョの世界へ!

09008l.jpgよくやく再開する余裕が生れた。途中でストップしていたロベルト・ボラーニョの『野生の探偵たち』である。上下巻にまたがる大部な著書。出てすぐにこれは読まなくてはと思ったのは、前著の『通話』があまりにおもしろかったからだが、『文学界』八月号に書評を頼まれてますます必然性が高まった。「はらわたリアリズム」という奇妙な名の詩の運動と、謎の女性詩人を追跡していく話が、何十人もの登場人物の証言と日記によってつづられている。特異な構成なので最初はとっつきにくい感じがするが、語りのリズムが素晴らしく途中から引き込まれる。作品にはボラーニョ自身の若いころの経験が反映されているようだ。ものすごい碩学にして女好きで行動家で前後の見境のない破滅的な男。詩を身をもって生きているという感じ。読んでいくうちにだれかに似ているような気がしてきた。編集者を辞めて詩人になるか写真家になるか迷って写真を選んだ男。自分の写真を否定して浜で燃やした男。中上健次のスペイン紀行に同行したとき書店を見つけるごとに飛び込んでいき、「こんなにインテリの写真家がいるのか!」と中上を驚愕させた男。そう中平卓馬である。彼の60、70年代の姿をわたしは知らないが、こんな感じだったのではないかと思わせる。この週末中に読了せねば。そういえば週明けには中平の名著『来るべき言葉のために』がオシリスより復刊されるらしい。(2010.6.18)