大竹昭子のカタリココ

朗読イベント〈カタリココ〉&トークイベントのお知らせと「日々雑記」

おしらせ&雑記

「エッセイと小説のあいだ」というテーマで、代官山ヒルサイドライブラリーでトークします。

エッセイは実際にあったことを書いたものだけど、小説は虚構が混じっている、と思っている方は意外に多いのではないでしょうか。でも、考えてみると、エッセイに虚構が入ることはよくあるし、その逆に、実際に体験したことを小説に書くことも少なくなく、虚構か、現実かで両者を線引きすることは困難。
それに、体験を書くにしても、実際に起きたことをトリミングして表現するわけで、軸足がどこにあるにせよ、虚構化の作業なくしては作品は完成をみないわけです。

私はつねに、本当みたいと思えるような噓、噓みたいに思える本当に惹かれてきました。現実と虚構のあわいや、揺らぎのなかに見え隠れする人間の意識の奥深さに、魅了されるのです。写真が好きなのも、現実にむかってシャッターを押しながら、写されたものは現実そのものではないからで、そういう感覚は文章の書き方、読み方にも現れでるようです。

昨年、同じ会場で須賀敦子さんについてトークしましたが、須賀さんも現実の虚構化について真剣に考えた方でした。そこで、今年、ライブラリーの蔵書におさめる10冊を私がセレクトしトークする、というご依頼をいただきたとき、「エッセイと小説のあいだ」というテーマをもうけて、10作家の10作品を選ぶことにしたのです。

エッセイには身辺雑記というイメージがつきまといますが、わたしが理想とするエッセーとは、身近な話題が飛躍を重ね、最後にとんでもない場所に着地するというものです。どんな作品が選ばれたかは当日のお楽しみとして、取り上げる作家名はヒルサイドライブラリーのWebサイトでご覧いただけます。

日時:2017.7.25(火)19:00〜20:30
会場:ヒルサイドライブラリー(ヒルサイドアネックスB棟3F)
会費:一般2000円、ヒルサイド会員・学生 1000円
予約:電話03-5489-1267 e-mail info@clubhillside.jp
http://hillsideterrace.com/events/1183/

7月23日、大阪で津村記久子さんと間取りトークをします!

DDslverUIAAYddQ_convert_20170702120527.jpg津村記久子さんはマドリスト? というのも、彼女の小説からはまぎれもなく空間が浮かんできます。川端賞を受賞した「給水塔と亀」(『浮遊霊ブラジル』収録)なんて、頭のなかで映画が一本撮れてしまうほど、細部がくっきりしています。空間がお好きなことは、まちがいないです。
津村さんは、カタリココにお呼びしたくとも、大阪在住でらっしゃるので、なかなか叶いませんでしたが、このたび大阪でトークが実現してうれしいです。関西のみなさま、ぜひどうぞ!

日 程 : 2017年7月23日(日)
時 間 : 開始 / 14:00~(開場 / 13:30~)
入場料 : 1000円
場 所 : アウラの部屋 心斎橋アセンス3階
出 演 : 大竹昭子 × 津村記久子

申し込みは→心斎橋アセンス

『遠野物語』の世界に直結! 6.22の名久井直子さんとのカタリココ。

IMG_4801.jpeg名久井直子さんの装幀の印象として、だれもが挙げるのは「愛らしさ」「かわいらしさ」ではないかと思いますが、名久井さんのなかには、それとは異なる力が潜んでいるような気がし、期待を込めて『間取りと妄想』の装幀をお願いしたところ、本をご覧になってのとおり、青焼き写真を応用した実に斬新なものが出来あがりました。きっとジャケ買いした方もいたのではないでしょうか。
岩手の旧家の、鴨居に祖先の写真がずらりと並んでいる部屋で、家にある唯一の書物である電話帳と冠婚葬祭のしきたりの本を遊び道具に、保育園にも幼稚園にも行かず、ときにNHKテレビを見ながら、寝たきりのおばあさんと過ごす、というかなり特異な育ち方をしたそうです。幼稚園に行かなかったのは、面接のとき、まわりの子供たちが粗暴なのに驚き、「行きたくないです」と母親に耳打ちすると、「なら、行かなくていいです」と言われたからで、このときのお母さんの英断がすごい!と思いました。本来もっているものが、鋳型にはめられることなく、自由に伸びていったことが、その後にかなり影響したはずです。
高校では理数系に進み、将来は数学者になろうと思ったほど、論理的な思考に惹かれた、というのも、納得でした。本をデザインするには、本の形やイメージだけではなく、紙などの資材や印刷方法や価格などを、総合的に考え、判断を下す必要があります。それができてはじめてさまざまなバリエーションに対処できるわけで、名久井さんの現在の仕事の広がりには、その数学的論理性が大きく作用しているのを感じますし、しかも読書家で内容への理解も深いとなれば、無敵です!
「設計」は英語だと「デザイン」ですが、あたかも、建物を設計するように、本の要素を組み立ててひとつの「建物」にするおもしろさ。名久井さんをここまで引っぱってきたのは、それなのでしょう。彼女以前にも女性のブックデザイナーはいましたが、このように総合的に本の造りを考えて、設計しはじめたのは名久井さんの世代からで、プロ意識のレベルが徹底しています。
IMG_4806.jpeg←(会場のポポタムにて)
子供のときに寝ていた部屋に先祖の肖像画があったことは書きましたが、その最初期の人はちょんまげをゆっていて、写真ではなく、絵だった、という話に惹かれました。写真のなかの人は視線が決まっているけれど、絵のなかの人はそうではなくて、自分が部屋のどこにいてもその視線で見つめられ、怖かった、と。
写真が一般化する以前に、ホンモノそっくりのモノクロの絵を遺影として飾ることがよくあり、岩手はとくにそれが盛んで、わたしも遠野の寺に奉納されてあるのを見たことがあります。話をうかがっていて、『遠野物語』の世界が名久井さんの世界と一気につながったような、不思議な気持ちになりました!(2017.6.30)