大竹昭子のカタリココ

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おしらせ&雑記

[ことばのポトラック vol.12 ----五つの声のかたち]のご報告

2015年5月24日、渋谷サラヴァ東京で第12回「ことばのポトラック」が行われました。「五つの声のかたち」という題のとおり、加藤典洋さん(評論家)、高泉淳子さん(俳優)、松田美緒さん(歌手)の三人のゲストに、司会進行役の堀江敏幸さんと大竹昭子という五種の声とことばが集合、熱演しました。
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加藤典洋さんは柳田国男が終戦の間際に書いた『先祖の話』について考察した「細い糸のなか、2015」という文章を朗読。柳田のこれをはじめて読んだときはピンと来なかったが、いま再読すると、柳田が戦争という大きな物語の渦中で小さな物語を手放すまいとしていたことに驚嘆する、という大震災をきっかけにはじまった小さなイベントの幕開けにふさわしい内容で、今日の芯ができました!020_convert_20150529094416.jpg
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033_convert_20150529094514.jpg042_convert_20150529094533.jpgつぎは私、大竹昭子で書き下ろしの「ちょっと山のほうへ」を朗読。内容はかなり前に思いついたものの、書き出したのは五月に入ってから。その最中に加藤さんから「これを読みます」と先の原稿が送られてきました。それを読んで自然とテーマが絞り込めていきました、連歌のように。
三番目は俳優の高泉淳子さん。大震災のときは栃木で沢田研二さんと舞台に立っていたそうですが、宮城のご出身で地震の恐怖を叩き込まれていた彼女は自動的に会場の窓を開けに走っていましたが、沢田さんは壁が落ちてきても芝居を続けていたとのこと。どちらもすごい集中度。トーク後休憩を挟んで高泉さんは着物姿で舞台に登場。「私、宇野千代子です」と名乗りながら若き日の恋を振り返る老女の姿を演じてくれました。司会をしているのに目頭が熱くなって焦ってしまったほど見事な演技でした。

つぎは堀江敏幸さん。読まれたのは「今朝考えたこと」という文章。昨夜書くつもりが大学があってダメで、今朝四時起きして書いたとのこと。リハーサルのときにも原稿に手を入れつづけていましたが、時間切れとなり「読みながら直そう!」。
ことばは意味を伝えるだけではなく、どのような状況でそのことばを使うかでその人の立ち位置があらわになってしてしまう、実にオソロシイものでもあるのを実感。相馬市にある埴谷雄高と島尾敏雄の記念館の話も登場、ぜひ今度行ってみたいです。
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トリは歌手の松田美緒さん。彼女は今年のはじめに日本列島のみならず、小笠原諸島や、日系移民が渡ったブラジルの歌をも採集したCDブック『クレオール・ニッポン』を出しています。まさに「ことばのポトラック」の精神を地で行っているような活動ぶりで、ぜひ出でいただきたいと思った次第。「やーまやーまのー」という一声が発せられたとたんに、加藤典洋さんが読まれた先祖の霊が山に集まるという柳田国男の話がよみがえり、ああ、と感嘆しました。伴奏なしのアカペラでしたので声が直に体に入ってきます。堀江さんが「深海にいるのに呼吸ができるような不思議な感覚」という絶妙な形容をしましたが、会場ぜんたいが深い海のなかでたゆたいながら一緒に呼吸しているような、すばらしいエンディングでした。

五人のステージが終了して寄付金の贈呈式。今回は陸前高田に移住し、映像とことばによる記録活動をしている女性のアートユニット、小森はるかさんと瀬尾なつみさんにお贈りしました。写真は、寄付金を受け取られた後に瀬尾さんが挨拶しているところです。これから巡回展「波のした、陸のうえ」が全国をまわるそうなのでご注目ください。また展覧会を呼びたいという方はご連絡を! http://komori-seo.main.jp

今年も版元から寄贈いただいた出演者の著書と推薦図書を割引で販売し、寄付金に充てる「本のポトラック」を開催。毎年販売を担当してくれる方々の実力が目覚ましく、完売! 本を広めたいという「ポトラック」の裏目標も達成できました(販売を受け持ってくださった黒田玲子さん、坂井聖美さん、猿田詠子さん、内藤寛さん、ありがとうございました!)

異なるジャンルの人々が集い、それぞれの方法でことばについて考え、披露する、というポトラックのスピリットを存分にシェアできた三時間だったと思います。ご参加くださった方々、ありがとうございました。最後の写真は終わって7階のオフィスで打ち上げをしているところ。初めての者同士なのに、互いのことを探り合うことなく、自然にスムーズにステージが進んでいった成果として、打ち上げもすばらしく和やかな場になったことを、最後に付け加えておきます。(2015.5.29)
写真・サカタトモヤ