大竹昭子のカタリココ

朗読イベント〈カタリココ〉&トークイベントのお知らせと「日々雑記」

おしらせ&雑記

1月の書評空間では以下の2冊を書評しました。

■『ライティング・マシーン ウィリアム・S・バロウズ』旦敬介著(インスクリプト)
書かずにいられないという必然と欲求に貫かれた熱いバロウズ論。
■『フェルメールのカメラ』ステッドマン・フィリップ著 鈴木光太郎訳(新曜社)
フェルメールの制作現場について、絵画表現についてさまざまな想像力を刺激。→書評空間

三省堂本店で『考える人』の特集にあわせて紀行文学フェアをやってます!

R0012853_convert_20110126180031.jpgいま発売中の『考える人』(No.35)は紀行文学特集です。冬に紀行文学について考えるというのも、意外にいいものですね。家にこもりがちなのでせめて本のなかで旅したい。寒さで凝縮した意識は「観光」より「旅紀行」に向いてます。遠い彼方への旅、昔の人がした旅、と時空を自在に伸び縮みさせて想像に身をゆだねられるのも、冬ならではの感覚です。わたしもこの特集号にエッセイを書きました。異邦人の書いた日本紀行4冊を取りあげ、そのなかに日本人がどう描かれているかを明治から現代までたどったのですが、そこで得た結論は、「日本人の物見高さは昔から変らない」。とくに外国人の姿に接したときのはしゃぎぶりといったら。いまだにこんなかと驚きます。先日神保町の三省堂に行ったら紀行文学フェアをやってました。『考える人』に取りあげられた本を中心にほかにもいろんな本が並んでいて思わず足を止め、いくつか買い求めてもやもやしていた旅心を収めたのでした。(2011.1.27)

30年前に住んでいた長屋がまだあった!

20110124162715892_convert_20110126230653.jpg201101232342235aa_convert_20110126230827.jpg先週末、国立の読書会の人たちが『ソキョートーキョー』を取りあげてくれるというので顔をだし、終了後、その情報をくれた従兄弟とその友人とともに町を歩いていたら、かつて私が住んでいたアパートの近くにいるのがわかり、もうないだろうと思いつつ行って見ると、あった! おまけに同行していた従兄弟の友人(イラストレーターのスギワカユウコさん・写真右)が、「私ここに住んでるんです!」と言ったので仰天してしまった。かつての私の部屋は2棟あるアパートの手前の右端で、彼女はその隣り。「見ますか?」と言われてさっそく上がらせていただき、中を見学。このアパートは部屋が1階と2階にあるデュプレックス形式の長屋なのが特徴。30年前にそれがおもしろくて住んだのだが、いまや人気が高くて住人にはアート関係や外国人が多いそうだ。当時はポットン便所だったのが水洗に変り、一階はフローリングに。彼女のところは前の住人が縁側を伸ばしてウッドデッキにしたそうで、もう1部屋あるくらい広く感じられた。1979年、私はこの部屋からニューヨークに発ったのだった。友人の知りあいがぜひ住みたいと言うのでカーペットやブラインドなどをそのまま譲ったのを思い出す。その頃から変った人が住みそうな雰囲気はあったが、「アーチスト長屋」になるとは! 広い中庭でアートイベントなどをやったりするそうなので今度行ってみよう。(2011.1.25)

ロベール・ドアノーの奥深さに触れられた夜

?? 1月10日にサラヴァ東京でおこなわれた「ドアノーの写真人生」には不思議な高揚感がありました。いまだに体にその波動が残ってます。ドアノーはすでにこの世を去っていますが、現世の私たちに謎かけに降りてきたような、そんな感じです。
 最初のきっかけはピエール・バルー氏の言葉でした。彼は80年代半ば、若いころからその写真に惹かれていたドアノー本人に出会うのですが、そのときに写真を見て想像していたのと実際の人物とのあいだに差はなかったかと質問したところ、写真から感じていたとおりの人だった、ちがっていたのはこの本だ、この本には自分の知らないドアノーがいた、と言ってドアノーのエッセイ集『不完全なレンズで』を指さしたのです。
 『不完全なレンズで』の訳した堀江敏幸さんは「それを聞いてほっとした」と答えられました。彼もまたドアノーの文体に戸惑いを覚えながら翻訳していたからです。自分ひとりではなかった、というわけです。
 『不完全なレンズで』をお読みになった方はわかると思いますが、とてもとっつきにくい文章です。比喩が多く、皮肉たっぷりで、真意がつかみにくい。だれが見ても微笑まずにいられない万人の心に訴えかけるあの写真を撮ったのと同一人物とはとても思えない。もしかしてだれかが手をいれたのではと勘ぐりたくなるほどです。
 出演者のひとり、潮田あつこ・バルーさんは、イベントの直前までパリにいてドアノーの娘さんに会い、その件を確かめてきてくれました。それによると、たしかにドアノーが書いたのにまちがいなく、文章を書こうとするとああいう書き方になる、それが彼なのだ、ということなのです。
 分かりやすい写真を撮るけれど、彼のなかにあるものは決して単純ではなく、それと言葉しようすれば複雑な言い回しにならざるを得なかった。つまり写真活動をするときの自己と、文筆活動にむかうの自己とが乖離していたわけで、ドアノーという写真家の奥行きを垣間見たような気がしてとても惹きつけられました。
 ドアノーは文中で写真家のことを「イメージの盗人」と呼んだりしています。写真家はなにかを作り出すのではなく、あるものを盗んでくる人だというニュアンスがこもっています。この含羞ある自己像がドアノーの核になっていると思います。彼が写真の道に入ったころ、写真家の地位はいまよりずっと低く、家族は彼のことを他人に紹介するのに「写真家」ではなく、その前にたずさわっていた「版画師」という肩書きを好んで使ったそうですが、そんな時代状況も彼の自意識に影響を与えずにおかなかったでしょう。
 おそらくドアノーの自我はずっと揺れ動いていたのです。写真のチープで怪しげな質感と、それに魅せられる自己の肉体とのあいだで……。撮っているときは忘れているけれど、ふと我に返ると自虐的な思いが兆してしまう。そんなセンシティブな状態をずっと引きずっていたのではないでしょうか。
 ドアノーはプレヴェールやサンドラールなどの詩人の仕事に深い敬意を払い、彼らと個人的にも交わり詩人の魂を身近に感じていました。「散文詩なんだと思えばすべてが了解できる」と堀江さんはおっしゃいます。なるほど、そう思って読み返してみると、どのページを開いてもドアノーの心の震えが見える気がします。それはカメラという機械が人に与える不安とも言えます。マグナムの写真家のように大義を掲げて世界に出ていくことはせずに、故郷であるパリ郊外に生涯こだわり、詩人にちかい立ち位置で写真と関わりつづけた人だったのです。
 トークのなかでピエール・バルー氏はプレヴェールとの出会いに触れ、彼からどんなに大きな影響を受けたかを語りましたが、それを受けて堀江さんは、ピエールさんはそのプレヴェールの魂を継承している人だ、とコメントされました。徒党を組まず、ジャンルにも埋没せず、人と人の出会いを演出し、そこから生まれでるものに期待を寄せたプレヴェール、ドアノー、そしてピエール。微力ながらもそれにつづく者になりたいと強く思った一夜でした。(2011.1.12)

2011年のカタリココ

<2011年のカタリココ>

2007年にはじまった<カタリココ>は、2011年に5周年を迎えました。
それを記念して7月にジュンク堂池袋店で「カタリココと私」展を開催、これまでのゲストの方々から送られてきた文章と私の感想文を掲載した「ポータブル2 カタリココ回想記」を発行しました。


■6月28日(火)
ゲスト:星野智幸
18時半開場/19時開演
予約開始:5月30日(月)12時より
定員:50名
会場:古書ほうろう


去年、『俺俺』を読み終えてすぐ、「来年のカタリココは星野さんで」と心に決めました。閉塞したこの世の中の、歪んだ合わせ鏡であるこの小説を、大竹さんはどのように読み、どんな話を引き出されるのでしょう。星野さんご自身による朗読も、とても楽しみです。(KM)

ゲスト・プロフィール
星野 智幸( ほしの ともゆき)/1965年、ロサンゼルス市生まれ。小説家。早稲田大学卒業後、新聞記者を経て、メキシコシティへ二度の留学。1997年『最後の吐息』で文藝賞、2000年『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、2003年『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞を受賞。最新刊『俺俺』では、本年の大江健三郎賞を受賞した。「第1回路上文学賞」選考委員で、ホームレス・フットサルの日本代表「野武士ジャパン」を応援している。ルイス・ブニュエル好き。


■7月23日(土)
ゲスト:穂村弘、長島有里枝
18時開場/19時開演
予約開始:6月20日(月)15時より
定員:80名
会場:サラヴァ東京


言葉の意味から離陸した上空にひとつの世界を結実させる短歌。視覚を手がかりにまだ言語化できないものを探りだす写真。穂村さんは写真に深い興味をもち、長島さんはいま文章でも活躍中です。言葉っていったい何なのでしょう。鋭い言語感覚をもつおふたりをお迎えしての異種格闘鼎談。(AO)

ゲスト・プロフィール
穂村弘(ほむらひろし)1962 年札幌生まれ。歌人。上智大学英文科卒。歌集『シンジケート』でデビュー。短歌に留まらず、エッセイ、絵本の翻訳、評論など、幅広く活動。『短歌の友人』で伊藤整文学賞受賞。短歌集に『手紙魔まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』『ラインマーカーズ』、エッセイに『絶叫委員会』『整形前夜』、対談集に『どうして書くの?』など。軽やかな筆致の奥に鋭い考察を秘めた文章が多くのファンを集めている。写真について的確な見方のできる人でもある。

長島有里枝(ながしまゆりえ)1972年東京生まれ。写真家。武蔵野美術大学卒。大学時代にパルコ主催の「アーバナート」展に家族ヌードを出品し、荒木経惟に絶賛されパルコ賞受賞。一貫して家族、友人、夫、子供との関係など、生きる現場から浮上してくる問いを写真で追究してきた。写真集に『YURIE NAGASHIMA』『家族』『not six』『PASTIME PARADISE』(木村伊兵衛賞受賞)、『SWISS』などがある。またすぐれた文章家でもあり、『背中の記憶』で講談社エッセイ賞受賞。


■9月11日(日)
ゲスト:平田俊子
17時受付開始/17時半開演
予約開始:7月19日(火)14時より
定員:30名
会場:ブックギャラリーポポタム

◎同時開催:村田喜子個展
9.7(水)~17(土)
9.12(月)のみ休廊
14:00~21:00
9.11(日)と9.17(土)は12~17:00
平田俊子『私の赤くて柔らかな部分』の挿画を描いたイラストレーターの作品展


坂の傾斜が人の心を傾ける、坂は人間を恨んでいる(『スロープ』より)と書く平田さん。東京の地形が好きで坂道を歩く大竹さん。人はどこからその道を坂と感じ、好奇心はどこから恐怖心になるのか、とそんなことを考えながらお二人の対話を心待ちにしています。(EO)




ゲスト・プロフィール
平田俊子(ひらたとしこ)詩人。1955年生まれ、福岡県出身。現代詩新人賞受賞後、1984年詩集『ラッキョウの恩返し』(思潮社)を上梓。『ターミナル』(1998年晩翠賞受賞/思潮社)、『詩七日』(2004年萩原朔太郎賞受賞/思潮社)、『宝物』(書肆山田)など詩を中心に、戯曲・小説・随筆も発表。2005年に小説『二人乗り』(講談社)で野間文芸新人賞受賞。『スロープ』『殴られた話』(ともに講談社)『私の赤くて柔らかな部分』(角川書店)、『きのうの雫』(平凡社)など著書多数。


■10月4日(火)
ゲスト:畠山直哉
18時半開場/19時開演
予約開始:9月5日(月)12時より
定員:40名
会場:ボヘミアンズ・ギルド


畠山さんの被写体は石灰石鉱山の現場や石灰工場、発破の瞬間、
または都会の建築群や地下水路。なぜ、どうしてこのような場所を撮り続けているのか。畠山さんにとっての写真とはなんなのか。そんな畠山さんの原点に迫るような話を聞いてみたいです。(K.N)

ゲスト・プロフィール
畠山直哉(はたけやまなおや)1958年岩手県生まれ。1984年筑波大学芸術研究科修士課程修了。「都市」をテーマに現代世界の在り様そのものを根底から問うような作品を発表し続ける。1997年に写真集『ライム・ワークス』、写真展『都市のマケット』により第22回木村伊兵衛賞受賞。2001年には世界最大の国際美術展である「ヴェネツィア・ビエンナーレ」に日本代表の一人に選ばれている。同年、写真集『アンダーグラウンド』により第42回毎日芸術賞を受賞。10月から東京都写真美術館にて畠山直哉展開催予定。


■11月11日(金)カタラレココ
聞き手:平松洋子
18時半開場/19時開演
予約開始日:10月11日(火)13時
定員:40名
会場:森岡書店


「カタリココ」とは反対に、ゲストの方が大竹昭子さんの著作に迫る「カタラレココ」。今年は平松洋子さんがホスト役をつとめ、「今年見た写真」をテーマに話しあいます。大竹昭子さんが考える写真の現在とは。また、平松洋子さんの見る写真のあり方とは。(YM)
 
◎展覧会予告
森岡督行著、平野太呂撮影「写真集をどうぞ」(仮)刊行記念写真展。
11月7日(月)ー19日(土) 13日(日)のみ休業 13時ー20時
大竹昭子さんと平松洋子さんを写した写真も展示予定。

聞き手プロフィール
平松洋子(ひらまつ ようこ)/エッセイスト。アジアを中心に世界各地を旅しながら、食文化と暮らしをテーマに執筆活動を行う。「サンドウィッチは銀座で」(文藝春秋)、「韓国むかしの味」(新潮社)、「焼き餃子と名画座」(アスペクト)、など著書多数。2006年には「買えない味」(筑摩書房)でドゥマゴ文学賞を受賞した。レアな写真集やオリジナルプリントを多数所有している隠れ写真ファンでもある。


◎ホスト・プロフィール
大竹昭子(おおたけあきこ)ドキュメント、小説、エッセイ、写真評論など、ジャンルを横断して執筆。2007年以来<カタリココ>を開催。東日本大震災直後に詩人・作家に呼びかけて言葉を持ち寄る「ことばのポトラック」をおこなう。来年3月まで継続の予定。著書に『図鑑少年』『随時見学可』『ソキョートーキョー』など多数。最新刊は『彼らが写真を手にした切実さを』(平凡社)。

◎入場料:各回とも1500円

◎2011年6月13日よりジュンク堂池袋店9階にて、カタリココ5周年を記念し<「カタリココと私」>展を開催、大竹昭子の語る各回の思い出、出演したゲストのコメント、参加古書店からのメッセージ、「ことばのポトラック」の映像と出演者のセレクト本などを展示し、この5年のイベントの成果を振り返りました。同時に「カタリココ回想記」を発行し、会場で配布しました。

2011年は<カフェ・カタリココ>の開催はありません。6月からはじまる<カタリココ>の予定については、「これからのカタリココ」の項をご覧下さい。